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2024.04.09
[レポート] 環境とイノベーションの未来(2024/3/15)
Aichi-Nagoya Startup Ecosystem Consortium主催で「環境とイノベーションの未来」を開催しました。
◇基調講演
「産業的課題としての気候変動政策」京都大学大学院経済学研究科 教授 諸富 徹氏
日本の環境政策や経済学者の研究結果、海外の環境政策の状況や成功事例および日本との比較を用いた解説と、脱炭素化が求める社会を理解し素早く適応していく必要性を述べた。
日本は2020年10月、菅政権下でカーボンニュートラルへの具体的な取り組みを開始し、産業界も本格的な対応に乗り出した。岸田政権はGX(グリーントランスフォーメーション)を推進し、カーボンプライシングの導入を決定。政府は2030年までに官民合わせて150兆円をGXに投資する計画で、その一環として20兆円の公的支援を行う。財源の一つとして排出量取引制度があり、2028年からは炭素付加金(実質的な炭素税)が導入される。これにより、日本のカーボンプライシングは段階的に厳格化される方向で進んでいる。
今回のGXの特徴は、産業政策と投資計画の統合で、地球温暖化対策としての目標を政府全体で策定。投資は計画されているものの、実現可能性や、投資計画の数字の担保や定量的評価の不足が課題。一方で、石炭火力や水素およびアンモニア戦略の課題も指摘。2050年の目標に向けては、この2020年代の行動が重要で、供給・需要の調整にはAIやデジタル化の組み合わせが必要。しかし、現状は既存産業の温存が目立ち、イノベーションの不足が懸念される。
グリーン技術への投資が世界的に拡大中。アメリカのインフレ抑制法案により巨額投資がなされ、エネルギー転換に大きな影響を及ぼすと思われる。一方、日本の排出動向は電力セクターが遅れ気味。電力需要は減少の中、再エネは増加し、石油火力は高コストながら減少傾向。原発も減少、ただし石炭火力増加で排出量が増大。今後、エネルギー基本計画で議論が開始される予定。経済成長と環境保護のバランスが問題となるが、イギリスのシンクタンクの調査結果によると、カーボンニュートラルへの移行で経済成長がむしろ促進する。スウェーデンの例から産業構造転換の重要性が示唆される。
日本の法案より、現行の産業構造を維持することを前提とした議論がなされている。他方で自然資本の持続性が脅かされており、経済活動にも影響することを認識し、持続可能性を重視する必要がある。それを認知した世界では市場競争のルールを変えつつあり、対応する産業・企業が変革を乗り越えて経済成長につながると考えられる。
◇パネルディスカッション
パネリスト(五十音順)
諸富 徹様 京都大学大学院経済学研究科 教授
北川 史和様 デロイトトーマツコンサルティング合同会社 執行役員
野瀬 正樹様 東邦ガス株式会社 企画部 経営企画マネジャー
伊藤 みほ様 株式会社デンソー 先端技術研究所長
課題1:地球温暖化の深刻さはいかほどか
日本人は、咀嚼に時間がかかるが故にアクションにはすぐつながらない
痛みを感じていないのは、国からの補助金によりエネルギーコスト上昇がシビアに感じられず、社会や企業にとってプライオリティが上がっていかないことの要因にもなっている
現時点でもロシアからエネルギーが輸入されているように、持たざる国の施策(努力)として長期契約による安定供給されている状況からも、深刻さにつながらない、事態の深刻さを理解していても、課題は脱炭素への行動を止めようとする保守的な力が働いているのではないか?
課題2:地球温暖化はリスクか?チャンスか?
現状の延長だと、イノベーションは起きない。削減スケジュールを明確化し、ビジネスのやり方を切り替え、産業構造を変えていくことが必要。
COP28にビジネスパーソンが多く集まったということは、具体的なビジネスを求めに行っている。
欧州は右か左かはっきり規範を決めようとするが、日本はまだまだカンブリア的な技術・ビジネスモデルの興隆期の状況であり、いずれにしろ、どのエネルギーをどう使うのが良いのかしっかり議論と行動を通じ検証・確認する必要がある。
脱炭素という外部不経済の克服にための水素、メタネーション等新エネルギー導入はコストが高くなるという現実につき国民理解が必要である。
生成系AI、データドリブン、電動化などこういう時こそDXとの連携が必要だが、日本はインフラが脆弱なことはいまだ課題である。
課題3:世界の状況、日本の状況
日本は資源を持たざる国であり、地政学的リスクがあるが、技術・産業の強さ、高精度な仕事ができることが日本の強みである。改善を強みとしたがゆえにロンリーワンとなり、世界の日進月歩に遅れてしまったのではないか。一部国ではEVにまっしぐらに進んでいるが、需要の特性や市場条件によりほかの対応方策もあるはずでありEV化の進展だけが脱炭素への回答ではないと思われる。目的と手法を区別して冷静に対応すべき。
課題4:我々の行動方針や戦略は?
資源消費から資源循環へというパラダイムの変革のチャンスであり、これは一昔前まで日本がとても得意であった生活思想である。
個人として自分たちがどう立ち振る舞うのかが大事であり、学校や家庭、企業内での議論・対話が非常に重要である。
国境炭素税問題やSCOPE3への対応など非財務情報の開示が重要となっている今後求められるため、企業活動における炭素情報の見える化、報告への準備を直ぐに始める必要がある。
ところで最近の日本では、世界一、世界初ということを聞かなくなった。すなわちチャレンジをする人が少なくなったと思う。過去の知識型人材育成から今や探索型・行動型人材の学校教育や企業内マネージメントの仕組みへと急いで変化しなくてはいけない。
企業はリーダー自らヴィジョンと行動を示す、一人一人が高い志を持てるように育成していかないと、企業から人が離れて行ってしまうし新人の採用も出来ない雇用環境にある。
さらに国際的な活動では自分の価値観を考え行動することが重要視される時代になっている。
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