NEWS

2020.08.20

[レポート] 第10回大人の学びなおし/芸術 (2020/8/18)

 

愛知県立芸術大学 倉地教授を講師に迎え、「いいかげんさ」と「緻密性」が同居する版画表現をテーマにご講演いただいた。新型コロナウイルス問題により約3ヶ月間遅れての最終回となった。11月4日より講師やテーマを変えて「大人の学びなおし/リベラルアーツ講座 第2クール」を開催する予定。(主催:一般社団法人中部圏イノベーション推進機構)

 

◇講演要旨
浮世絵や戦後の現代版画など、世界的にも稀な歴史性を持つ日本の版画表現は、以外と日本人が知らない世界なのです。国際コンペの受賞常連国でもあり、FIFAランクがあれば間違いなくブラジルやドイツに匹敵するぐらいのトップクラスです。
版画には主に木版・銅版・リトグラフ・シルクスクリーンなどの技法があり、それらは印刷技術として確立され、芸術に移行してきた歴史を持っています。また、それらの技法は整版や摺刷の行程は複雑で、様々な熟練した精緻な技術が必要とされます。版画家は一種職人のような技量を磨き、版画表現の世界へ繋いでいくのです。
版画は、油彩や水彩のようにダイレクトに絵の具を筆で描き作品を仕上げていく手法と違い、反転、白黒、道具や描画方法などの制約があり、不自由な面も多々あります。そして、摺り上げて紙をめくるまで作品を見ることが出来なかったり、摺ってみるまでわからない偶然性を要する特殊な技法もあり、制作過程で想定できない博打的な特性も同居しています。熟練した精緻な技術、方法の制約性、偶然性や博打的要素など、どこか矛盾した相反するような特性を持った版画表現が日本で開花したのは不思議です。「北斎」や「写楽」などの大胆で独創的な表現は、世界中の人々を未だ色褪せることなく魅了しています。
おそらく些細なことにも気を配り、物事を極めることに長けた日本人のきめ細やかさと楽観的かつどこか良い意味で無責任な感性が結実したからではないでしょうか。
欧米では、版画は聖書、新聞の風刺や出版などともコラボし、政治や世相を映し出すメディア的な役割も機能を持ち、単なる純粋芸術表現とは違う歴史も持っています。
今回の講演では、まず版画表現とは何か、日本や西洋の版画文化や表現の違いも含めて、その成り立ちを知ってもらい、その後の現代版画がどのように日本や欧米で展開したのか?そして現代の若手版画家を中心に、どのような発展や可能性を広げているのかを倉地先生の作品も交えて解説いただきました。そのような背景や流れの中で、「偶然性・良い加減」と「計画性・緻密性」という両極性を併せ持つ、版画表現が持つ独特の世界観を伝えていただきました。

◇参加者の声
・非常に興味深く面白い内容でした。版画の奥深さを知ることが出来ました。版画は生き方に通ずると思いました。
・リラックスできた話でした。バレンや見当についても質問したかったのですが、お聞きしたい事があり過ぎました。

この記事をシェア