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2021.01.11
[レポート] 大人の学びなおし第2クール 第4回/宗教 (2020/12/16)
大人の学びなおし第2クールの第4回講義は、南山大学 人文学部キリスト教学科 佐藤 啓介准教授を講師に迎え、「記憶されるもの、記憶すべきもの、記憶されないもの~デジタル時代における慰霊・追悼・記憶~」(領域:宗教)をテーマとして講演いただいた。
◇講演要旨
20世紀は、戦争の記憶や災害の記憶など、大きな物語に回収できない、声にすらならない多様な「小さな物語」を吸い上げることが「記憶の倫理」であった。
21世紀のデジタル時代においては、スマートフォンをはじめとするデバイスによって、私たちの行動などは知らないうちに記録されており、膨大な量のデータが(有用不用を問わず)放っておいても集まってしまう時代になった。いわば私たちの「記憶」はそれらのデバイスに外部化されているといってよい。そうしたデータが氾濫する一方、私たちはそのデータの氾濫のなかで何を記憶すべきか・忘れるべきでないかという指針を失いつつある。今回は、そのような一例として「死者」についての記憶という主題を取り上げた。
社会全体が世俗化し、葬儀儀礼が簡略化・個人化していくなかで、死者について記憶する伝統行事(例:墓の建立、三十三回忌)の意味は薄れつつある。他方で、死者について忘れてよいか、と問われると歯切れが悪い返答しかできないのが現状であろう。その歯切れの悪さは「では、死者のことを忘れてはいけないのか?その理由は?」という問いに、自信をもって答えられないからである。死者を忘れたら祟られるといったオカルト的理由以外の仕方で、どのようにしてこの問題を考えたらよいのだろうか。
そして、「私たちの中に記憶する」のではなく、「外部に記憶する」ことが容易になったデジタル化時代において、そうした死者についての記憶を殊更に維持する必然性があるのだろうか。今回の講義ではこのような問題を通して、現代における「記憶と忘却の倫理」について考えた。
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