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2022.01.06

[レポート] 大人の学びなおし第3クール 第4回講義 (2021/12/20)

大人の学びなおし第3クールの第4回講義は、金城学院大学 文学部 小松 史生子 教授を講師に迎え、「江戸川乱歩から読み取る東海圏の文化」(領域:文学)をテーマとして講演いただいた。

◇講演要旨

明治27年に三重県名張で誕生した江戸川乱歩(本名:平井太郎)は、明治30年には父の転職に伴い名古屋に転居。名古屋白川尋常小学校、市立第三高等小学校、愛知県立第五中学と進学した。家運の傾きにより旧制第八高等学校進学こそ断念したものの、早稲田大学入学までの学歴は名古屋で積んでおり、実に15年間という月日を名古屋で過ごしている。見落とされがちではあるが、江戸川乱歩の作品には、実は名古屋や東海圏の文化が散りばめられているのである。

乱歩文学に頻繁に登場する見世物小屋や八幡の藪しらず(迷路)、パノラマ島といったアトラクションは、この名古屋で過ごした少年期に経験したものだ。また、名古屋の御園座で鑑賞した映画「ジゴマ」は、後の怪人二十面相を生み出すのに少なからず影響を及ぼした。さらに、乱歩が生み出した不朽の名探偵・明智小五郎は、その名前を美濃出身と伝わる戦国時代の武将・明智光秀から採っている可能性が高い。

江戸川乱歩は、大正7年に三重県の鳥羽造船所に就職。当時の同僚には後の探偵作家・甲賀三郎や評論家・井上良夫の父などがいる。代表作「屋根裏の散歩者」や「パノラマ島奇談」の着想を得たのも鳥羽時代である。また、竹久夢二の弟子で与謝野鉄幹や南方熊楠とも親交のあった民俗学者・岩田準一とも当地で知り合った。岩田準一と江戸川乱歩が収集した男色文化に関する莫大な資料は、現在の近世文学研究に大きく貢献している。
岩田準一の生家は、鳥羽商工会議所によって江戸川乱歩館として営業していたが、2021年10月にもらい火によって延焼してしまった。これまで貴重な文献が、紙類でかつ木造の建物に保管されている状態であったため、昨年から文献をデジタル化する作業を進めていた。1階にある貴重な資料は既にデジタル化が完了していたが、2階の資料のデジタル化を始める矢先の出来事であった。現在は、かろうじて残った、2階の金庫に保管されていた手紙類の修復およびデジタル化の作業をおこなっている。

今回は、乱歩文学の幾つかを東海圏の郷土作家の作品という観点から、東海圏の文化と江戸川乱歩の作品世界のつながりを読み解いた。

 

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