NEWS

2022.02.03

[レポート] 環境とイノベーションの未来 (2022/11/29)

11月29日(月)、Aichi‐Nagoya Startup Ecosystem Consortium(中経連、名古屋大学、愛知県、名古屋市など)と(株)中日新聞社は、イノベーションを通じてカーボンニュートラル社会を考えるイベント「環境とイノベーションの未来」を開催。会場のナゴヤ イノベーターズ ガレージおよびオンラインをあわせて280名が参加した。

基調講演:2050年カーボンニュートラル社会に向けた世界の動向「COP26現場リポート」

イギリス・グラスゴーで開催されたCOP26に、現地参加した三重大学特命副学長の朴恵淑氏が登壇し、カーボンニュートラル社会に向けた世界の動向を共有した。

【講演要旨】

パリ協定の発効から6年経ったが、世界の全体感としては総論賛成、各論反対という状況が続いている。この状況を打破するため、COP26では具体的な活動指針にするための議論が展開された。もはや気候変動ではなく気候危機と認識されている。世界の気温上昇を1.5℃未満に抑えるため、科学と政治の融合、各国の2030年削減目標の見直し(2025年提出)が合意され、石炭の段階的な廃止、CO排出権クレジットの取引、次代を担う若者のグローカル人材育成、企業・地方自治体・学界がパートナーシップを組み取り組むことも議論された。

日本の高い科学技術力や公害を経験してきた環境政策を生かせば、必ず気候危機の緩和および適応策のトップランナーになれるはず。特にものづくりの強い中部圏は、イノベーションによるさまざまな変革を先導してほしい。

 

パネルディスカッション:我々はイノベーションを通じたカーボンニュートラル社会を提案する

ユーグレナ社長の出雲充氏、デンソーフェローの川原伸章氏、三井住友信託銀行フェロー役員の金井司氏、名古屋大学教授の則永行庸氏の4名を招き、イノベーションを通じたカーボンニュートラル社会を考えるパネルディスカッションを実施した。モデレーターは講演に引き続き三重大学の朴氏が務めた。

前半は、各業界のトップランナーの立場から再生可能エネルギー、ものづくり、ESG投資などの金融、環境技術の開発などの観点で、取り組みや課題感について共有した。後半は、カーボンニュートラル実現に向けたイノベーションの必要性について議論した。

出雲氏は、脱炭素に向けてイノベーションが不可欠であるが、日本はベンチャー投資がとても小さく、世界で最もスタートアップ企業に冷たいと感じる。大学発スタートアップはイノベーションの宝庫であり、もっと応援してほしい。また、多様性が高い組織ではイノベーションが起きやすい。ユーグレナでは高校生のチーフ・フューチャー・オフィサーを置き、未来の主人公と一緒に本気で変革に取り組んでいると伝えた。

川原氏は、日本は欧州などに比べ、再生可能エネルギーの供給能力不足、コスト高の試算があり、国内でものづくりすることが厳しくなるという危機感を持っている。また、イノベーションという観点で、日本は材料面で強みを持っている。高効率に繋がる素材など、材料分野で大きなイノベーションを起こさないと私たちの将来はないとメッセージを送った。

金井氏は、イノベーションは技術だけでなく社会システムにも起こる。金融は全体をコーディネートし、どこに資金を流せば未来を託せる技術の社会実装ができるのか、考えていくべきだと伝えた。

則永氏は、脱炭素に向けて何もしないことが、大きなリスクとなる。大学は技術だけでなく、文化、法など、多種多様な知の拠点であり、橋渡しの役目も担えるはず。多くの人達と連携し、アクションし続けたいと語った。

 

この記事をシェア