NEWS

2024.01.25

[レポート] 大人の学びなおし第5クール 第6回講義(2024/1/19)

大人の学びなおし第5クールの第6回講義は、昨年に引き続き愛知県立芸術大学美術学部の白河 宗利先生を講師に迎え、「美術作品を読み解く―名古屋市美術館作品の解説-」(領域:芸術(美術))をテーマとして講演いただいた。

 近年では、美術館の企画展覧会を観に行くと、入口で解説が聞くことのできる装置が配布されている。美術に馴染みのない人達にとっては、その装置による解説が美術作品を読み解く手がかりとなり、理解を深めることとなっている。

 現代美術の発展により、一般的に理解しがたい作品があることも多いので、美術分野の人間にとっても美術作品の歴史や成り立ちが多くの人々に伝わるのは喜ばしいことでもある。

 しかし、美術作品の正しい鑑賞方法や理解の仕方という視点で考えると少し懐疑的な部分もある。そもそも、美術作品とは、(一部の作品を除いて)基本的に言語を介さないメディアである。もっとシンプルにいうと、「まずは自らの目で見て、感じてから判断する」のが正しい鑑賞方法であるといえる。

 これまで様々な視点から美術の考え方ご講義いただいてきたが、そこで引用する美術作品は全てモニターを通して映し出した作品写真だった。

 今回の講義では、前半に名古屋市美術館で実物としての美術作品を観覧し、後半はガレージにてフランク・ステラ及び市美術館所蔵の「説教」について解説。なお、参加者へはこの日この作品を題材とすることを事前には知らされず、当日、当該作品を中心に見るよう案内された。それは、美術作品は「まずは自らの目で見て、感じてから判断する」ものだからだった。

 名古屋市美術館では現在、白河先生が修復に携わった「猛獣画廊壁画修復プロジェクト」修復完了報告展も開催されており、常設展とこの報告展を鑑賞した。

 講義の最後には改めて「アート思考とはイノベーションを示唆するのか?」という点に言及。
 曰く、美術作品はスマホのように人々の生活を便利にするモノではない。しかし、時代を変革してきたアーティスト達の作品は、その純粋さの中にモノづくりの本質が秘められているという。すなわち、「既成概念に囚われないピュアさ」があり、その発想を信じて「カタチになるまで継続する力」ではないか、と。

 「それは美術作品ならば『独自性の実現』であり、皆さんであれば何ですか?」と問いかけをいただいて、講義は終了した。アート思考とは、人々が見ている世界の外側にある嬉しさに到達し、引っ張ってくるための力なのかもしれない。

 

 

この記事をシェア