REPORT
2026.03.26
【レポート】リベラルアーツナイト第7クール第7回 国際政治(2026/2/4)
■リベラルアーツナイト概要
“知に出会い、アップデートする夜”
時代の課題の真因を探索し、問いを立てる能力が求められる中、リベラルアーツの重要性が認識されています。10名の講師がリレー形式で現代社会を読み解き本音で語ります。
■第7回 国際政治
ハイブリッド戦争 — ロシアを事例に戦場以外の「戦争」を考える

本講座では、慶應義塾大学総合政策学部 廣瀬陽子教授にご登壇いただき、今まさに世界で進行している「ハイブリッド戦争」について深く学びました。ウクライナ戦争の裏側で展開される“戦場なき戦争”の実態をお話しいただきました。
廣瀬氏が強調したのは、現代の戦争は“軍事+非軍事”が一体化した総合戦である点です。サイバー攻撃、偽情報、経済圧力、民間軍事会社(PMC)の活用、難民を利用した社会不安の誘発など、ロシアは複数の手段を同時に組み合わせ、相手国を長期的に疲弊させる戦略をとっており、特に2023年以降は、その攻撃がヨーロッパで顕著に増加しているとのことでした。ドローン侵入、海底ケーブル切断、GPS妨害などの“連動型インフラ撹乱”が多発し、偶発事故か攻撃か判別できない「グレーゾーン」ゆえに対処が難しい点も特徴とも語られました。
衝撃的だったのは、生成AIを使った「ドッペルゲンガー作戦」です。
BBCやCNNを模した“本物そっくり”の偽動画が大量生成され、SNSで拡散されることにより社会に疑念が植え付けられます。
ファクトチェックの追いつかない情報量が、民主主義国家の基盤である「選挙介入」を容易にする現実。私たちの日常も、この情報戦のターゲットになり得ることを痛切に感じさせられました。
ハイブリッド戦争は決して遠い世界の話ではありません。
ロシアは日本を「米国の従属国」と捉え、攻撃の標的と見なしやすい国であることも指摘されました。特に日本のメディアリテラシーの低さは大きなリスクであり、中国・ロシアの情報工作にも脆弱な現実があります。
さらに、ロシアと北朝鮮の軍事協力強化により、北朝鮮は最新のドローン戦術を習得。近い将来、日本が“ハイブリッド攻撃の直接的な標的”となる可能性も示されました。
講演の終盤、広瀬氏は対策のヒントとしてフィンランドの「包括的安全保障」モデルを紹介されました。
これは国・自治体・企業・市民が一体となり、
- 1年分の食料備蓄とトップ・販売者・生産者などがつながって常時食糧状況の確認と調整を行うこと
- 全住民を収容できるシェルター整備
- 情報戦への教育
- インフラ防御
などを平時から国家戦略として行うものです。
日本もこのようなロシア周辺国の取り組みから学び、包括的安全保障等に取り組んでいく必要があるであろうと語られました。
今回の講演は、国際安全保障の知識を超え、私たちの暮らしにも直結する「世界の変化」を鮮烈に体感する時間となりました。
私たちにとっても、社会課題を自分ごととして捉え、私たちが社会の一員として何を学び、どう行動するべきかを考える、気づきと刺激に満ちた時間となりました。
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