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2021.06.08

[レポート] フューチャーコンパス第24回講演会 (2021/04/26)

クロス・フィロソフィーズ株式会社代表取締役社長の吉田 幸司 氏を講師に迎え、「本質的課題を突き止め、意義を確立する『哲学シンキング』」と題して講演をいただいた。

【講演要旨】
1.社会へ提供する価値が問われる時代

企業は本業とは別の文脈でCSR活動を行い、非営利組織が社会課題に取り組むというように、営利活動と社会貢献活動は、これまで別々に実施されることが多かった。しかし、最近は本業を通じて社会課題解決を目指す潮流となってきた。企業として取り組む課題を見極め、コミュニティへ提供できる価値を明確化することの重要性が増していると言える。
哲学コンサルティングでは、本質を突き詰め、価値を追求する企業・事業に伴走し、哲学・倫理学の専門知や手法を提供しながら、人々の意識・価値観の調査、異分野間のチームビルディング・ビジョン共有、組織の対話文化醸成や人材育成などに取り組んでいる。

2.課題を正しく定義することが解決の鍵
例えば、「働き方改革の一環として、女性の活躍を推進したい」という課題に対して行う哲学シンキングのワークショップでは、最初から女性活躍の解決策を検討するのではなく、課題そのものを問い直すところからはじめる。「女性の活躍とは何か」「男性の活躍像と同じなのか」と、問いを重ねるうちに、女性活躍という概念そのものに対する認識や、目指すべきビジョンが人によって異なる事がわかってくる。むしろ、男性も育休を取得したいとか、女性活躍には男性の協力が必要であるといった課題の再定義につながり、その解決に向けて、ジェンダー平等に対話する施策を行ったこともある。
このように、哲学シンキングは問題の真因を問う力や、議論を構成する思考力を醸成する。当事者にとっての真の課題を正しく捉えなければ、解決を模索しても喜ばしい結果とならない可能性がある。逆に、適切にアプローチできれば対象者のエンゲージメント強化につながるだろう。

3.考え抜く力の育成を
ビッグデータを蓄積しても、本質的なインサイトを得られないこともあるのではないだろうか。哲学思考では、問いの本質を追究する事で、データからは導けない「なぜ」を言葉にし、人や世界をより深く理解することができる。
答えが一つではない問いに対して向き合い、考え抜く力が、これからの時代の競争力・共創力の源泉となるのではないだろうか。どの世代も納得する普遍的な意味での「よりよい社会」を実
現するためにも、それが何かを探求し、哲学的に追究していかなければならないと考えている。

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