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2021.12.07
[レポート] GLOW Pitch (2021/11/18)
グローバル展開を目指すスタートアップが競うピッチイベント『GROW Pitch』が開催された。GLOW Pitchは、名古屋市主催のスタートアップ成長支援プログラム「GLOW TECH NAGOYA」の第二弾のイベントにあたる。第一弾の「Global Mindset Program」に参加したスタートアップに加え、新たに多くの企業がエントリーしたなか、書類選考を勝ち抜いた猛者17社が登壇した。
17社の中から熱量を感じた3社をさらに選りすぐって紹介する。
AquaAge株式会社
17社が登壇するピッチのトップバッターを務めたのはAquaAge株式会社だった。同社は個々人にあったスキンケア商品が手元に届いていない問題に着目し、『HADABON』というスマホアプリを制作した。同社は上のような問題の原因を三つに分類した。①肌の状態が常に変化すること、②スキンケア商品が膨大で選択肢が多すぎること、③肌の状態の定量分析が困難であることの3つだ。従来の企業は3つの課題の解決策として顧客から取ったアンケートに基づいて商品を提供する「主観的な」手法をとっていたが、『HADABON』は顧客の主観に依らず、画像解析と機械学習といったテクノロジーによってより精度の高い「客観的な」手法で顧客に合った商品を提案する。コスメ市場は2009年から毎年4%で成長し続けており、2030年には6490憶ドルを超える市場になると予測されていることから同社は今後の収益が十分見込めると予測している。顧客はサービスをサブスクリプションで利用できるが、既に220人の利用者がおり、顧客からの反応もよい。また、人種による肌の違いに対しても考慮してスキンケア商品を開発しているなどグローバルに展開していく意識も高い。何より前回の「Global Mindset Program」参加時より改善されている同社は審査員から評価されており、学びを生かせる会社としての力も感じる。AquaAge株式会社の今後の躍進に期待だ。
BFACT株式会社
続いては二番目に登壇したBFACT株式会社だ。同社は希少がんや難治性腫瘍への治療提供を目指すバイオスタートアップである。同社はまずターゲットとして骨肉腫患者を挙げている。骨肉腫とは骨のがんで、その患者の約半数が20歳未満という若い世代に発症しやすいことや、本邦での新規罹患者数が一年あたり約200人である希少疾患ということが特徴として挙げられるそうだ。希少疾患のため患者数が少ないため、市場規模が小さい。そのため再発骨肉巣患者の5年生存率は約18パーセントであるのに、製薬メーカーに対する開発のインセンティブが働かずこの40年間骨肉腫治療の新しい薬は出来ていないと同社は訴えた。この問題に抗体薬物複合体(ADC)という技術から解決を狙うのが同社だ。同社開発のADCは抗体というたんぱく質に、一般に使われている抗がん剤の約1000倍の強さをもつ強力な抗がん剤を付加したものだ。これを患者に投与すると抗体の部分がまず機能を発揮し骨肉腫に集積、その後付加した抗がん剤が骨肉腫を殺傷する。このような薬理機構はカイオムバイオサイエンス社などの競合他社が取り組んだことがない斬新なもので、また、がんの標的範囲が従来のADCよりも広いところに強みがあるそうだ。先述した市場規模が小さいという問題については、再発骨肉腫の次のターゲットを市場規模が大きい胆管がんや膵臓がんといった難治性がんまで拡大することで乗り越える方針だ。優遇される多数と不遇な少数の問題である希少がんや難治性腫瘍の治療が進んでいないこの現状に、果敢にもメスを入れたBFACT株式会社がどれだけ大きな成果をあげるのか、注目したい。
ベーシックバイオ合同会社
前半9社のピッチを終え、休憩をはさんで後半8のピッチに移った。後半の中でも印象的なプレゼンを見せたのはベーシックバイオ合同会社だった。同社は九州大が開発したDAC技術「CO2超速分離ナノ膜」をコア技術に、化石燃料を用いないハウス栽培を目指すスタートアップである。DAC技術とは大気中からCO2を直接回収し、野菜・果実の育成を促進するCO2施用に用いられる技術だ。従来のDAC技術は化石燃料をもとにしており、コストも手間も場所も必要だったが、同社は「CO2超速分離ナノ膜」と小型の太陽光パネルの設置のみでCO2施用をすることができ、これによって従来の化石燃料にかかったコストや大型装置設置に要する場所・手間を削減することが可能だ。加えて化石燃料を用いないため、環境にも優しい。このような特徴を踏まえ、人口増加に伴う食料需要の増大、脱炭素化など環境の配慮が求められていく時代の流れが同社のビジネスを後押しし、大きな収益が見込めると同社は予測している。環境問題と食料問題、さらには農家で働く高齢者まで救う同社のビジネスモデルがグローバルに展開した未来を見てみたいものである。
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