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2021.12.22

[レポート] 大人の学びなおし第3クール 第3回講義 (2021/12/08)

大人の学びなおし第3クールの第3回講義は、名古屋大学 大学院情報学研究科 戸田山 和久 教授を講師に迎え、「概念工学として哲学を捉え直す」(領域:哲学・科学哲学)をテーマとして講演いただいた。

◇講演要旨

哲学とは、概念の工学である。
工学の目標は何か?それは、「人工物の設計を通じて人々の幸福に貢献する」ことである。そして、技術製品は、実際に我々の生存と幸福を支えている。
では、われわれの生存と幸福を支えている人工物は、「技術製品」などの物質的な〈もの〉だけだろうか?

たとえば、「人権」の概念。最初から人類は「人権」という概念を持っていたわけではなく、人類史の中で、人々が苦労して生み出して、多くの人がそれをバトンタッチしてくれたおかげで、われわれはそれなりに幸福に生存できている。概念・理念も我々の生存と幸福を支えているのである。

「人々の幸福に資するところの人工物」は、「技術製品」と「概念・理念」の双方であるとすると、概念を関心の的とする哲学は、概念・理念の設計・加工を通じて人々の幸福に貢献する「工学のもう一つのやり方」と言ってもいいのではないだろうか?

今回は、実際に概念工学を実践。自動運転車、自立型ロボットやAIが普及し共存する社会では、これまで人間では起こさなかったような事故や誰にも責任を問えない事故が起こりうる。「自動運転車が事故を起こした場合、その事故は誰の責任か?」という問いには、倫理システムには責任概念が重要だという前提がある。

そもそも責任の担い手になれない人工物であるロボットやAIとの共存を、既存の倫理によって対処しなければならない「問題」として捉えるのではなく、われわれの倫理性の向上のための「機会」として捉え、責任概念を抜きにした倫理システムの可能性を探ったらどうか?責任という概念に依存せずに倫理が成り立つか?

「無責任倫理の提案」をテーマとして、そもそも責任とは何か?なぜ責任という概念を捨てるのが難しいのか?どうやったら責任という概念を消去することができるのか?実際に事例を交えながら、概念工学を実践し、議論した。

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