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2022.05.26

[レポート] フューチャーコンパス第32回講演会 (2022/4/15)

Beans International Corp社長の遠藤吉紀 氏を講師に迎え、「シリコンバレーでこれからの製造業を考える」と題して講演をいただいた。

【講演要旨】
1.製造業の集積地、シリコンバレー
シリコンバレーは、製造業の一大拠点であることをご存じだろうか。現在の巨大IT企業は、ハードウェアの端末をユーザーに供給して、そこに搭載したシステムとソフトウェアを利用させ、情報を利活用するビジネスモデルで成功し、大きく成長した。
Appleやgoogle、Alibabaは現在、モビリティ産業に積極的に参入しようとしている。これも、車の製造販売そのものではなく、モビリティを通じて授受する情報をビジネス化しようとしているのである。
ポスト・コロナのシリコンバレーは、自動化・非接触のニーズや人員不足を補うロボット産業、そしてモビリティ産業などにおいて、製品への情報授受機能の搭載が一層進み、新たな製造業の時代を迎えるだろう。

2.先端産業を支えるシリコンバレーの町工場
新産業の周辺には、電池や素材など、付随する基幹部品の産業も劇的に発達してくる。スタートアップが速いペースで行う最先端の製品開発に欠かせない試作は、現地の町工場が支えている。シリコンバレーには技術力、競争力ともに持ち合わせた町工場が1,000社以上集中しており、新規産業構造に追従した実力のある企業だけが生き残る新陳代謝のエコシステムができあがっている。
町工場の経営者や技術者にはアジア人が多いが、私がシリコンバレーに来てからの20年で、日本人の経営者はほとんど見かけない。世界のマーケットで活躍しようというエネルギーを持った経営者が日本からはなかなか出てこないのである。
最先端のビジネスをつくり出す場に日本の技術が使われていない。言い換えれば、世界のマーケットで売ることができていないということになる。技術は売れて、使ってもらわなければ、意味がない。

3.日本の製造業が生き残る道とは
居心地よい日本と従来のサプライチェーンに浸り、現状維持に注力している間に、既に産業構造は大きく変化している。日本はもう、「ひとづくり」などと言っている場合ではない。全員のマインドセットが準備できるまで待っている余裕はなく、トップダウンで意思決定していかないと、波に乗り遅れてしまう可能性もある。私は現在でも、日本の技術力は、世界に伍するトップレベルのものであると考えている。例えば、電池製造分野やその生産技術、品質管理において、日本企業がこれまでに培った経験や技術は、今後も間違いなく世界に必要とされるだろう。
問題は、その技術をどう咀嚼し、現在や将来のマーケットに生かしていくかである。国内、海外を問わず、積極的に新規産業創出を牽引するスタートアップなどと連携してPoC※をまわす、試作に取り組むなど、世界と同じスピード感で競うことで、世界の潮流の中での自分たちのバリューが見いだせるはずである。PoC段階への参画は、将来の量産化ステージで仕様の標準化に組み込まれるチャンスにもつながる。ジャパン・ブランドを復権させる気概を持ち、自分たちの価値を引き出せるマーケットをしっかりと見極め、グローバルな視点に意識を引き上げて活躍の場を能動的に開拓していかなければならない。大胆に意識改革して、新しい冒険に乗り出してほしい。

※PoC(Proof of Concept):概念実証。試作などを通じた実現可能性の証明のこと。

 

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