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2023.03.08

[レポート] 大人の学びなおし第4クール 第7回講義(2023/2/14)

大人の学びなおし第4クールの第7回講義は、愛知県立芸術大学 美術学部 白河 宗利 准教授を講師に迎え、「絵画を読み解く— 創造性と構造の秘密 —」(領域:芸術(絵画))をテーマとして講演いただいた。

◇講演要旨

「絵画」は、美術作品の中核を成す表現媒体といえる。そして、そのほとんどが観る人の眼を通して伝える視覚表現であり、平面上に絵具で表現された作品である。

絵画作品は、古典絵画〜近代絵画〜現代絵画と時代を経て価値観や表現方法が変化してきたが、絵画がキャンバスの布や下地の塗料、様々な絵具で層をなす「構造体」として成り立っている点は、変化していない。これを専門用語いうと絵画の重層構造と呼ぶが、特に西洋で発達した古典絵画は厳密な技法の手順に沿って各塗料の層の重なりによって描かれている。近代〜現代になると、ペンキ塗料・アクリル絵具の発明や、画家の表現が優先される風潮もあり、この重層構造が曖昧になってきた節はある。

今回の講義では、美術館との共同研究で得られた絵画作品の自然科学的調査データを基にして、「絵画を読み解く」ための方法を紹介し、その技法に迫るとともに、作品を描いた画家の時代背景や作品のコンセプトまで、その技法を切り口に解説。古典絵画から現代美術までの作品画像を見ながら、画家が生み出す作品技法の秘密を読み解いていった。

日本油彩画の2人のキーマンと呼ばれる高橋由一と黒田清輝の絵画の違い、目で観える表現ではなく、その構造・技法を化学分析して分かったこととは。
日本に残されている近代の絵画が軒並み壊れ始めている理由とは。
メキシコ滞在時の北川民次の作品の魅力、その考え抜かれた絵画技法とは。
朝刊を騒がせ、パリ画壇の絶賛を浴びた藤田嗣治の肌色の秘密とは。

絵画作品の創造性と構造の関係、視覚的には現代性が強く反映されている作品でも、古典技法を応用したアーティストが思いのほか多いという事実、時代の大画家たちが残した創造者としての名言にも、心打たれながら、創造ついて考えさせられる回であった。

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