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2023.03.15

[レポート] 大人の学びなおし第4クール 第9回講義(2023/3/14)

大人の学びなおし第4クールの第9回講義は、上智大学 大学院実践宗教学研究科 佐藤 啓介 教授を講師に迎え、「死者をデジタルに蘇らせる— 死者AI技術をめぐる倫理・心理・権利 —」(領域:死生学)をテーマとして講演いただいた。

◇講演要旨

近年のAI技術の急速な発展により、故人をAIで再現し、動かしたり、コミュニケーションをとれる技術が普及しつつある。国内でも何件かテレビ番組等で取り上げられたり、韓国では企業によるサービスの提供も始まった。この技術の特徴・論点となるのは、AIとしてみた場合には技術的に特殊なものではないが、死者を元データとする点である。技術的は実現可能だとしても、このような技術はどこまで推進してよいのだろうか。

このことを考えなければならない背景には、日本社会が人口減少社会であること、すなわち多死社会でもあることが挙げられる。
また、かつて葬儀は地域や会社で行うなど、共同体全体で受け止められてきたものが、孤独死、無縁仏、葬儀の簡略化や個別化など、死別の悲しみの個人化が進んでおり、この悲しみを社会全体でケアしなければならない、「グリーフケア」の必要性が論じられ始めている。
さらに、悲嘆をめぐる理解の変化も起きている。心理学において、以前は「死者はもういない」という現実を受け入れて乗り越えるという対処が正しいと言われていたが、近年では死者との思い出・絆を大切に生きていくことが心理的に健全という考え方が出てきている。

そのような状況の中で、今回の講義では、死者AI技術が、(1)ユーザーにどのような心理的影響を与えるか、(2)法律的にはどのような議論が可能なのか、(3)倫理的にはどのような議論が可能なのか、という三つの観点から考えるとともに、死者の権利、死別の悲しみの個人化など、現代日本社会の死をめぐる課題について考えた。

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