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2020.10.23

[レポート] フューチャーコンパス・アカデミックナイト特別講演会 (2020/09/02)

演題「リチウムイオン電池が拓く未来社会」

【 講 師 】 名城大学大学院理工学研究科 教授 吉野 彰 氏
プロフィール/旭化成(株)名誉フェロー、1972年京都大学大学院工学研究科石油化学専攻修了、1972年旭化成(株)(旧旭化成工業(株))入社後、イオン二次電池事業に携わり2019年ノーベル化学賞を受賞。2017年より現職。

【講演要旨】
1.産業界研究者の苦悩
   小学校4年の時に出会ったファラデーの『ロウソクの科学』がきっかけで、理系の道・研究者の道を目指した。旭化成に入社後は探索研究を続け、9年後の1981年にリチウムイオン電池につながる研究をはじめた。探索研究は非常に孤独であり、自分が給料泥棒になるのではないかと重圧がかかった。リチウムイオン電池は入社後4番目の研究であり、それまでに3回失敗した。「失敗からしっかり学習すること」「自分の発明した技術に自信を持つこと」「ゴールが必ずあると信じること(リチウムイオン電池は1995年のIT革命で爆発的に伸びた)」が重要である。

2.世界を変えたリチウムイオン電池
 2019年のノーベル化学賞受賞者のみならず、1981年の「フロンティア軌道理論」、2000年の「導電性高分子(ポリアセチレン)」、計8名のノーベル賞受賞者の成果によって小型で軽量な二次電池「リチウムイオン電池」ができあがった。開発までにたくさんの研究が関わっているが、自分自身、大学の研究者が発見し、当時の新材料「ポリアセチレン」の研究を行ったことが開発につながるきっかけとなった。大学の研究者が見出した新材料の商品化が、産業界の研究者の仕事であると考えている。
   リチウムイオン電池は、IT革命を契機に一気に市場が拡大した。そして、世界中が一斉に動きはじめ、現在のMobile IT社会が実現した。次の大きな変革は2025年に起こると予想している。これからの社会は、「環境性」「経済性」「利便性」の3つを揃えることが重要となる。これは困難だが、決して不可能ではない。これから、自動車産業は大きな変革期を迎える。技術革新は、準備期間は長いが動き出したら非常に速い。ぼやっとしていると、一番美味しいところを持っていかれてしまう。

3.若者は大いに尖がれ
   ノーベル賞受賞者は、平均35歳で受賞対象となった研究をスタートしている。ある程度の経験があり権限もある35歳が、一番尖ってないといけない年代。この年代は、周りの反対を押し切ってでも思い切ったことにチャレンジしてほしい。また、20代の学生には、この35歳でのチャレンジを一つの目標として取り組んでほしい。

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