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2021.05.26

[レポート] 大人の学びなおし第2クール 第8回/地球生物学 (2021/02/24)

大人の学びなおし第2クールの第8回講義は、名古屋大学博物館 大路 樹生 教授を講師に迎え、「地球生命史から我々は何を学べるのか?」(領域:地球生物学)をテーマとして講演いただいた。

◇講演要旨
登壇者は、過去の生物の歴史とその進化を明らかにすることを第一の研究テーマに、日本全国や世界各地での化石の採集や生物を観察する野外調査により、もの(化石自体)とフィールド(地層)の観察から情報を引き出すということを行っている。

長い地質時代にわたる生物の栄枯盛衰を概観すると、一つ見えてくることがある。それは生物の出現、絶滅が全体としては比較的短い間に起きている、ということ。今から約5.4億年前~6億年前の動物出現と多様化(カンブリア爆発と呼ばれています)は、海の中の多様な動物の祖先が短い間にほぼすべて出現するという現象である。また、短期間に多くの動物が消滅する大量絶滅も、短い時間に大きな変化をもたらした。大量絶滅はこれまでに5回起きたと言われており、過去の生物がどのようにこの危機を乗り越えて現在まで至っているのかを、我々は知っておくべきである。

我々も地球の変動を目にして、短い間に大きな変化を経験している。2011年に起きた東北大地震と津波も、さらに大地震は予測不可能なところで起きるのが常であり、驚くほどの大災害であった。また今回の新型コロナによる影響も、短期間に人間生活を大きく変える現象と見ることが出来る。いくら人間が未来を見通しても、予想外の大きな現象が突然起きることは避けられない。

その際、我々はどう対処したらよいのか、いかに生きるべきか? この答は科学の領域を超え、おそらく哲学とも関係することと考える。予測可能なこと、例えば近未来に起こる地球温暖化と海面上昇はおそらく数十年の間に起こることでしょう。しかし、人類の活動が地球環境を変えることは、実は人類が出現し、農耕牧畜生活を始めた時から運命づけられていた、ともいえる。短期間の予想に基づいて拙速な判断をすることのないよう、長い生命の進化や地球の歴史を参考に判断することが良いでしょう。

「近視眼的ではなく長い未来をみることが必要ではないか?」「危機を乗り越えるためには単一よりも多様性を高めることが重要であり、現代社会や企業活動も同じではないか?」「予想外に対応するためには、自分の知識を十分に持ち、情報を集めて自分自身で判断することが重要ではないか?」等、人類の歴史よりはるかに長い地球生命史から現代に生きる知恵を考えた。

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