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2021.10.12

[レポート] フューチャーコンパス第28回講演会 (2021/09/07)

フィールド・フロー株式会社代表取締役の渋谷健氏を講師に迎え、「DX for Beyond the Border ~自分たちの未来は自分たちで創る~」と題して講演をいただいた。

【講演要旨】
1.そもそもDX(デジタルトランスフォーメーション)とは何か?
DXとは「変容」である。世の中はカーボンニュートラルなど、持続可能な社会への変容が不可欠であり、産業構造も持続可能な経済モデルへの変化が必要とされている。変化した社会構造で生き残り、持続可能な社会へたどり着くためには、「ヒト」「組織」「事業」のあり方を競争型の従来構造から共創型の新たな構造に変えていく必要がある。
DXにおいて、現状の延長線でデジタルツールを活用する作業効率化や延命治療は誤った認識である。本質的なDXとは原点に立ち返り、デジタルの潮流の中で真に求められている社会価値を探究=デザインし、自ら変容=トランスフォーメーションしていくことにある。デジタル技術の活用はその前提に過ぎない。
社会価値の軸は「カネ」から「ヒト」へと変わる。「カネ」は必要だが、目的を達成するための手段でしかない。「ヒト」が豊かで幸せであることがより重要になる。それに伴い、信頼には専門性よりも透明性が、行動には規模よりも俊敏性が、成果には競争優位よりも全体性(社会の価値循環)が必要になる。結果として社会全体で価値を創出するオーケストレーション※1が実現され、従来構造の限界を突破することが可能になる。
※1:オーケストレーション:オーケストラがハーモニーを創るように領域を超えて互いに協力し、新たな価値を共創すること。

2.なぜ、いまDXが必要なのか?
私たちにはどれだけの時間が残されていて、未来に何を残せるのだろうか。人口減少、気候危機、災害など想定外で先の読めないことが当たり前に起きている。向き合うべきは、社会を継承すること。
日本企業はイノベーションへの取り組みが遅れ、競争力は低下を続けている。もはや先進国として扱ってもらえる状態ではなく、昭和の経済成長による成功体験に強烈にアンカリング※2されている。また、経営にとって重要なノウハウや知見を外部依存する傾向があり、実践ノウハウが霧散し、業界および地域の衰退が起きている。今変容しなければ手遅れになる。
※2:アンカリング:物事の判断や行動に影響を与えている先入観、固定観念・思い込み。

3.いかにDXに取り組むべきなのか?
キーポイントはトラスト(信用・信頼)である。我々は産業革命により物理的な距離(モビリティ)、時間的な手間(情報技術)の壁を越えてきた。次に求められるのは心理的な壁(トラスト)を越えること。トラストを扱い社会的な価値を創出するため、「ヒト」の内面から変容することが必要である。それは世界に必要なのか、そこに無条件の信頼はあるかといった問いを立て、物事の本質に気づく力を磨き続けることが大切である。

4.DXをどこから始めるか?
DXにおいて最も重要なことは「ヒト」からのアンロックである。固定観念・従来構造による囚われを断ち切り、必要な共通言語・共通認識を再度築き直し、「自分の未来は自分でつくる」という主体性を持って、会社などの枠を超えて、社会価値に向けた実践に取り組み続けることである。若手は10年後・20年後の担い手として、40代前半までの中堅は今すぐ動ける実践者として、40代後半以上は未来を次世代に託す器として、組織や社会を変える原動力へと変容することが求められる。
そのために必要なことは実に単純である。兎にも角にも新しい可能性に一歩でも踏み出していくこと。ぜひ今回の機会をアンロックのきっかけとしていただきたい。

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