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2022.01.28

[レポート] 大人の学びなおし第3クール 第5回講義 (2022/01/12)

世界中で創造的破壊が起こり、激しく変化する世の中。答えのない課題に立ち向かうビジネスパーソンに向けて開催する、デジタル時代の価値観を考えるリベラル・アーツ講座「大人の学びなおし」は、今年度で3クール目となる。第3クールは、11月10日~3月23日の期間に全10回開講する。今回は、1月12日に名古屋大学博物館教授 大路樹生氏が登壇した、第5回の内容を報告する。

◇講演要旨

1.深海は地球上に残された人類未開の地
人類は、エベレストや南極点など地球上のあらゆるところに到達している。今では宇宙が新たな探査先として注目を集めている。人類は、地球上のほとんどの場所を探査したのではないかと思われるが、実は深海で探査ができた場所は限られており、そこには生命の起源を知る手がかりがあるとも言われている。地球の面積の70.8%もある海は大半が深海であり、そのほとんどが人類未開の地である。
深海にはほとんど餌がなく、549m以深には動物は生息しないと言われたこともあったが、1864年の海洋調査で、生きている化石「ウミユリ」が820mの深さから採集された。その後、これまでの調査で、ウミユリは水深9000mを超える驚くべき深さにも分布していることが分かっている。

2.食うか食われるか~動物たちの生存戦略~
動物が生存するためには、他の動物や植物を見つけて食物とすることが必要である。動物の間では厳しい生存競争があり、どの動物も効率よく餌を見つけ、またほかの動物に狙われない工夫を進化の過程で身に付けてきた。
海洋では、約1億年前の中生代に海洋変革が起こり、多様な捕食動物が多数出現したことで、それまで平和に生活していた貝などの底生動物を危険におとしいれるようになった。巻貝や二枚貝なども、捕食者に対抗できる形態や外的から逃げることが可能な種の割合が、この時期から増えている。

3.「生きている化石」の戦略から学ぶ
一般的な生物は、形態を変えることで、環境変遷や外敵に対抗してきた。一方、生きている化石「ウミユリ」は強力な再生能力を持ち、捕食者に腕を食べられても、それを修復することで、長い間細々と形態を変えずに生き続けている。これは、「無抵抗主義」に近く、敵が攻撃するならば、その被害を最小限にとどめ、自らのダメージをいち早く修復するという戦略である。ビジネスにおける生存戦略や共存共栄の考え方なども、生物の生存戦略から学ぶことができるのではないだろうか。

 

 

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