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2024.04.30

[レポート] 哲学の夕べ#5(2024/3/15)

定例プログラム「大人の学びなおし」から派生したガレージ哲学カフェ「哲学の夕べ」の第5を開催しました。今回も「哲学対話」の手法について理解を深めるとともに、「学び」と「イノベーション」の関係について対話を深めました。

◇過去回のレポート
第1回 「『学びなおし』は必要か?」
第2回 「『学びなおし』は何をもたらすか?」
第3回
①AIと人間とイノベーション+なぜ「イノベーション」が必要と言われているのか
②イノベーションにおける「多様性」の役割

第4回
①なぜ、上手に失敗できる組織、一人ひとりの多様な価値を求め・見出し・活かす組織になれないか?
②意思決定に必要なコトとは
③意味ある仕事とは

◇第5回要旨

今回も3つのテーマに分かれて対話しましたが、やはり同じテーマで複数グループ作った方が話が深まるなというのが今回の主催側の反省です。欲張り過ぎました。

■テーマ①:「面接の意味」や「理系・文系で分ける意味」といった切り口から採用について考える
第4回の対話では、挑戦できる・多様性のある組織づくりや、意思決定に必要なもの、意味のある仕事とは何かという3つのテーマについて話し合ったところ、いずれも人事(採用や評価など)のやり方について言及する結果となりました。そこで、組織づくりのスタートでもある採用について考えました。

 まず、「採用の目標は何か?採用では何をするか?」・「理系・文系で分ける意味は?」という問いに対して、「仕事に適した人、専門性や感性をバランスよく採りたい。採る際にどんな知識や感覚があるか、理系・文系を参考に判断しているのでは。」という考えに至りました。

また、「面接の意味」については、「面接では、志望者の思いを聴き、人柄を見て、「感覚」が合っているか、一緒に仕事できそうかを見ている。特に、コロナ禍のオンライン面接を経て、対面で感じるものが大事だという感覚がある。」という考えに至りました。
理想の組織に必要な人材として、多種多様な考えを持ちながらも、同じゴールに向かって共に頑張ることができる人材を、理系や文系といった客観的情報と面接での肌感覚という両面から選んでいるようです。

しかし、最近は若者の早期退職が目立つと言います。理由は様々ですが、よく会社が頭を抱えているのは「自己実現ができない」という理由による退職だと言います。それができない主な理由は、会社のビジョンが合わないことだとか。

学生の就活を振り返ってみれば、どの程度就活において企業のビジョンを確認していたのか。そもそも企業のビジョンが合うかどうかを判断できるほど自分のビジョンを描けていたのか。

この齟齬を解消するには、教育現場に社会を知っている人が必要ではないか、会社ビジョンが無ければ人が集まらない時代になっている、というところで対話は終わったようです。

このグループでは、「採用側が志望者をどのように見るか」から、「どうすれば若者に選ばれ、長くいてもらえる会社になるか」という志望者側の視点に移っていったようです。まさに買い手市場から売り手市場への転換が起こている影響かもしれません。このような変化がある状況下で、これまでと同じ採用方法(あるいは評価方法)ではいられないことが窺えます。

まだまだ、どのように人材を選別するかといったポイントや、退職理由(本当に自己実現と会社ビジョンのミスマッチなのか)など、深堀りできるポイントがありそうですね。

■テーマ②:「意味のあるもの」と「役に立つもの」の違いを考える
「大人の学びなおし」特別回の話の中で、日本企業は「役に立つもの」を、欧米企業は「意味のあるもの」を作るのが得意だ(最近は役に立つものは大方満たされ、意味のあるものが世界を豊かにしている)という話がありました。そこで、両者の違いについて考えてみました。

 まずは「役に立つもの」と「意味のあるもの」について定義してみることにしました。すると、役に立つものは「役に立つという意味がある」のでは、という意見から、「意味のあるもの」が「役に立つもの」を内包する、意味の無いものは恐らくゴミとなる、という考えに至りました。
役:物質的、機能的な役割  意味:精神的、主観的な幸福感

また「意味」は、時代や環境、人によっても変化するという意見もありました。例えばスマホも時代や環境によっては無意味であり、他人にとっては役に立たないものも自分にとっては意味があるものも多くあるというものです。事例としては、特別回でも紹介があったように、誰にとっても有難い車は役に立つものであり、乗っていて楽しい車は役にも立つし+α車好きの人には意味もあるものとなります。また最近では、ワーク・メイク・ライフ・バランスという言葉もあるそうです。「メイク」という仕事と家庭以外の自分の幸福のための活動が充実し、3者のバランスが好循環を生むという考え方だそうです。

 さて次に、「意味のあるもの」の理解を深めるために、「なぜ人は機能的なだけではない『意味のあるもの』を欲しがるのか」という問いを立てました。理由としては、ステータスといった他人からの承認欲求と、自分からの楽しい・好き・気分が良いといった満足感がありそうです。それらはお金で得られるものに限らず、また突き詰め・求め過ぎると返って何かが不足するという性質があり、ある一定程度までは変化の幅が幸福の幅となりうるものの、意味の範囲の広がりには限界があるという意見がありました。 そしておそらく、日本人はこの意味の範囲や枠を、一方で不足するもの(リスク)にばかり目が行ってしまい、狭めがちなのではないかというところで対話が終わったようです。

こちらもまだまだ、「意味のあるもの」とは何かといったポイントや、日本人がこれを苦手としている?理由について深堀りできそうです。

■テーマ③:大人の学びなおし/リベラル・アーツについて考える
「大人の学びなおし」に参加した方のグループで感想、考えたこと、気づいたことを共有し、なぜリベラルアーツを学ぶのか、どんな時に役立つか、などについて考えました。

まず、「なぜリベラルアーツを学ぶのか?」という問いを立てたところ、「自分の知らないことを知る、引き出しを増やす。仕事の専門以外の分野に触れる新鮮味や、音楽・文学を通して非日常に触れる心地よさもある。仕事は成果を重視しがちだが、リベラルアーツで『考える』機会をもちたいから。」という考えに至りました。

次に、「他の先進国に比べ日本はリベラルアーツへの理解や関わりが薄いのか?」という疑問に対して、「日本には学ぶことに対して、即効性を求める風土が今まであったと思う。(ex.資格取得を会社が推奨)日本人は自分はどうしたいか、自分はどんな人間か?など等自発的な問いが苦手で、他者からの評価や忖度が先に立ちそれが自由な思考の妨げになっている」という話がありました。

また、「会社などにおける日常の生きづらさから解放されるために学ぶ」という意見もありました。コミュニケーション不足による無駄な諍い、上司に対等にものが言えない…などという仕事上の悩みも、過去の文献などから何千年も前の中国やギリシャでも同じようなことで悩んでいたことも読み取れる。そういったものから解き放たれて自由に考えるための、発想法やフレームワークのようなものがあると思う、とのことでした。
日頃の自分たちは、つい「答え」を求め、わかった気になって、考えることをやめてしまいがちですが、なぜ自分たちがリベラルアーツを学びたいのか?という目的に立ち返り、あえて「答え」は脇に据え置いて、常に考えるクセをつけたいと感じたという話をしたそうです。

さて、今回はテーマを欲張り過ぎてあまり深堀り対話ができなかったな…と反省です。
次回はまた新たな年度にもなりますので、初心に返って/引き続き、テーマについて考えることよりも対話を深めることを重視していきたいと思います!

次回は5~6月のどこかの金曜夜の予定です♪

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